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都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第十回 昨日との決別

  私なんて……。

  口にしたくないと思っても、無意識に出てしまう言葉。幼い頃から心の奥にしみこんだ根深いコンプレックスは、私にそんな口癖を与えた。ネガティブな言葉を口にすると、行動も言葉に引っ張られてしまうと著名な心理学者が言っていたけれど、私の人生を振り返るとまさに「言いえて妙」だと思う。

  有名人の母親を持つ娘は、少なからず私と同じような感情を抱いたことがあるのではないだろうか? 

 「どうして私は母のようになれないのだろう」と。

  20代にして文壇で名をあげた母は、28歳の時に私を産んだ。父が文壇界の重鎮だと知ったのは、高校に入学する直前のこと。妻子ある立場の父を困らせまいと、母は一人で私を産み、育てた。美しく聡明な母と、類稀な才能を持つ父の間に生まれた私は、周囲の期待をおもしろいほど裏切るよう凡庸な大人へと育っていった。

  文才はまったくなく、夏休みの感想文にも苦労する始末。見た目は至って地味で、一言で言えば華がない。それを補える会話術があれば人生が違っていたのに、あいにく私は引っ込み思案で話しベタで、家にいるのが何よりも好きだった。

 「お母さんと似てないわね」


 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
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