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都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第九回 おさななじみ

  さっきからボクは、バーカウンターの上に 飾られているフラワーアレンジメントに目を奪われている。

  それもシルバーの産毛をうっすらとまとった、何の変哲もない葉っぱをまとった枝に。見ただけでこの木の名前がわかるのは、恐らくよっぽどのガーデニング好きか、花に携わっている人くらいだろう。美しい花を咲かせるわけでもない、目立つわけでもない地味な木だから。

  コアラのエサ。

  こう言えば、誰もがユーカリとわかる。動物のエサになることで名前を知られるって、何だか寂しい気がする。大物女優と格差結婚して、「〜さんのダンナ」と頭に形容詞をつけられて呼ばれる売れないお笑い芸人みたいだ。そんなことを考えながら、ボクは黙って美人バーテンダーが作ったマティーニを飲んでいた。

  真帆とわかれてから、今日で2年目になる。あの頃のボクたちはまだ18歳で、こうして酒を飲むこともできない青い二人だった。ボクたちはいわゆるおさななじみで、将来は結婚するものだと親をはじめ、周囲は誰もがそう思っていたし、もちろんボクだって例外ではなかった。そう、真帆一人をのぞいては。

  中学を卒業し、高校生になると真帆は急に大人っぽくなった。髪をうっすらと茶色く染め、これでもかというほど目の周りを黒く囲み、くちびるをてらてらと光らせていた。

 「これが流行ってんのよ」


 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
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