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都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第五回 ふたたびの恋

 「何をお召し上がりになりますか?」

  凛とした女性バーテンダーの問いかけに、私は迷うことなく、「グレープフルーツを使ったカクテルを」と答えていた。彼女がシェーカーをふるっている間中、私は最初に出されたグレープフルーツの香りがするおしぼりをいじりながら、隆とすごした日々を思い出していた。

  隆への思いを抱えたまま、高校を卒業し、私たちは互いに別々の大学へ進んだ。在学中、彼氏と呼べる人が何度かできたことがあったが、結局、隆のことが忘れ切れず、どの恋も中途半端な思い出だけを胸に刻んで終わってしまった。 鬱々としている時、偶然にも開催された同窓会で、私は隆と再会した。隆は12キロ痩せた私を見て、驚きを隠せなかったようで、一瞬、言葉を失い、少し間をおいて、「女っぽくなったな」と照れくさそうに言った。その一言がどれほど私を有頂天にさせたことか。自信をつけた私は、6年間温め続けた彼への思いを伝えた。そして私たちは同じ時を重ねてゆく“同士”となった。

  少しでも時間があれば彼に会いたい。

  私の心はそうした思いだけに満たされていた。

  自分のことよりも彼のこと、仕事にかける時間があるなら彼に会いたい。

  私がそう思うのだから、隆も同じように思っているはず。

  私は少しも疑うことなく、そう思っていた。

  互いのベクトルが違う方向を向き、愛情の重さに差が出ているとも知らずに・・・・。


 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
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