00
11
bar
都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第三回 太陽の結界

  「いってくるからね」

  彼女はビーチベッドで寝転ぶ僕に笑顔でそう言った。

理恵は泳げない。だから遠くへはいかない。彼女自身も「岩場の浅瀬にマスクをつけて見るだけよ」と言っていた。

  安心しきっていた。

  僕たちにそんなことは起こりっこないと。

  周囲の騒ぎに気づいた時には、もう遅かった。波間に理恵の美しい指がゆっくりと沈んでいくのが見えた。台風の影響で、沖へと急速に流れる離岸流が、浅瀬にいた理恵をいとも簡単にさらっていってしまったのだ。浅瀬だと思っていた場所の底が、すべて砂だったのが災いしたらしい。棒倒しの原理で足周辺の砂を波に持っていかれたため、一瞬にして足が立たない深さになり、泳げない理恵はそのまま離岸流の餌食にされてしまった。

  そして理恵はその日から年をとらない人になった。

  永遠に-------。

  何もできずビーチでたたずんでいた僕を、太陽だけが見ていた。



 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
  Copyright (C) 2008 OSHIBORI JAPAN All Rights Reserved.