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都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第二回 家族パズル

  「うるさくてすいません」

  「いえ、いいんですよ。この店は携帯OKですから。あの、お出になったほうがいいんじゃないですか? また鳴ってるみたいですし」

  「いえ、もういいんです。この人にとって、私なんて必要ない人間なんで(笑)」

  グラスを磨く彼女の手がふっと止まった。ジョークで言ったつもりだったけど、もしやシャレになってないんだろうか? そうしている間にも、また携帯のバイブがカウンターの上でジージーと音を立てていた。

  「熱くなっている時って、確かに時間を置いたほうがいいのかもしれませんね」

  ケンカのことを言ったわけでもないのに・・・・、やっぱり女性のカンなのだろうか。

  「少し頭を冷やさないと・・・・」

  「でも冷やすのも適度がいいって私は思いますけど」

  「適度、ですか?」

  「はい。お酒にも言えることなんですが、液体のうちはまだいいですけど、一度凍ってしまうと溶けるまですごく時間がかかります。溶けて元通りかっていうと、そうではなく、風味や味が格段に落ちてしまうんです。うっかり冷凍庫に入れっぱなしにしたビールを、解凍して飲むとよくわかりますよね」

  「ええ、確かに・・・・」   携帯の着信を知らせる光を見ながら、私は両親のことを思い出していた。家を出た後、何度か連絡をもらっていたのに、「ほとぼりが冷めるまで」と連絡が途絶えるまで放置していた。だが時間がたてばたつほど、こちらから連絡を取るのを躊躇してしまう。そうしているうちに疎遠になり、6年という歳月が流れてしまった。今、このまま直哉との関係を中断してしまったら、私は間違いなく同じあやまちをおかしてしまうだろう。


 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
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