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都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第二回 家族パズル
  
「いらっしゃいませ」

  涼やかな目元の美しい女性バーテンダーが、優しく出迎えてくれた。「お暑いでしょう?」と言いながら、よく冷えたおしぼりを出してくれた。ふっとにおい立つのはペパーミントの香り。都会の洗礼とも言える独特の暑さで熱を持ったからだが、たったひとつのおしぼりだけで引いてゆく。

  「何になさいますか?」

  「ビール・・・・、いえ、何かさっぱりするものを」

  「かしこまりました」

  彼女はシェーカーをふるうでもなく、大きなグラスに山盛りのミントを入れ、それを細い麺棒で丁寧につぶしはじめた。縁まで入れられたクラッシュアイス、バーボン・・・・、それはいったい?

  「ミント・ジュレップでございます。ケンタッキー・ダービーで飲まれるカクテルです」

  ペパーミントのおしぼりに合わせたのか、カクテルもまたミント。初めて飲むミントの風味豊かなカクテルは、飲むとほのかに甘かく、空っぽの胃に染み入った。一息ついていると、携帯がけたたましくなり、私は慌ててマナーモードに切り替えた。直哉からだ。昨日の夜からこれで何回目だろう。

 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
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