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都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第二回 家族パズル

  正直、彼の子どもたちに対し、「高校生と大学生ならもう大人」と甘く見ていた部分もある。実際、彼女たちとは大人の話ができたし、私を母親としてではなく、父親のパートナーと思ってくれることがすごく心地よかった。40歳間近で初婚で、子育て経験もない私に母親を求められても、悩むだけだったろうし、そのあたりは彼女たちも暗黙の了解で理解してくれていた。

  適度な距離感のある家族。

  私は彼を含め、彼女たちのことをそう解釈していた。

  彼と上の娘が、レストランで口論を始めたのがすべての発端だった。毎度のことなのだが、さすがに日曜日で人が多いこともあり、いつもなら決してしない仲裁に入った。双方を幾度となくなだめていたが、勢いがついている二人は何を言っても止まらない。意を決して、「いいかげんにして!」と怒鳴ると、一瞬、水を打ったように静かになった。そして彼女はゆっくりと私のほうを振り返り、侮蔑のまなざしを向けながらこう言った。

  「家族の問題なんだから、黙っててよ」

  この一言で私たちの5年間がすべて白紙に戻ったような気がした。そこからはあまりよく覚えていない。泣きながらひとり店を後にし、感情に素直になったら東京に来ていた、という感じだ。あてもなくひたすら歩いたせいか、足が痛い。わずかな休息を求め、私は何も考えず、「ラルム」と書かれたバーの扉を押した。

 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
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