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都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第二回 家族パズル

  生まれ育った街の香りが恋しかった。

  私が東京に来た理由は、ただそれだけ。

  大阪駅でふと見かけたバスの表示板に書いてあった「東京」という文字が目につき、とっさに飛び乗り、一睡もせず早朝、新宿駅に着き、歌舞伎町のネットカフェのソファで泥のように眠った。

  目が覚めると夕方の6時をとうに過ぎていた。冷房が相当きいていたのだろう。二の腕が氷のように冷たくなっていた。でもそれ以上に私の心は冷え切っていたのだけれど・・・・。

  「どこへ、行こう・・・・」

  外に出ると、深いため息と一緒に、ホンネがもれた。

  生まれ育った場所なのに、実家もあるのに、私にはどこにも帰る場所がなかった。

  両親の反対を押し切って、直哉と結婚したのは5年前のこと。両親は「バツイチの子連れ」という彼の条件がどうしても気に入らず、半分、勘当されるような形で私は家を出た。

  「絶対、幸せになってみせるから」

  そう言って、泣きながら飛び出した手前、どんなにつらいことがあっても、一度たりとも両親に泣き言を言うことはなかった。もちろん、実家に帰るなんてことも。だが今回だけはどうにも感情を抑え切れなかった。


 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
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