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都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第一回 恵みの雨

  彼女は静かにうなずきながら、こう続けた。 
  「オーストラリアの原住民・アボリジニは、ユーカリの葉で傷を治すそうです。きっと心の傷にも効く。私はそう信じてます」

  彼女の言葉が終わらぬうちに、私は声を出して泣いていた。マスカラが取れることも、奥二重の目が余計に腫れぼったくなることを忘れて。とめどなくあふれる涙を吸い取るのは、ユーカリの香りが漂うおしぼり。心に  染み入る香りに包まれながら、私は声がかれるまで泣き続けた。心に深く空いた傷を埋めるかのように。そんな私を見やるともせず、彼女は黙ったまま、グラスを拭き続けていた。

ようやく涙がおさまり、われに返ると、バーだというのに何もオーダーしていないことに気づいた。

  「あの、お酒を・・・・」

  「もう終電の時間じゃないですか?」

  時計を見ると、12時を回っていた。ここに3時間近くいたことになる。

  「初めてだっていうのに、すいませんでしたっ。またすぐ来ますから!」



 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
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