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都心に存在するという「バー ラルム」は神出鬼没のバー。そこを見つけられることができるのは、
選ばれた人だけ。なぞめいた美人オーナーの出すアロマチックなおしぼりは、その人の心を解き放ち、向かうべき場所へと導いてくれます。今宵、その扉を開けるのは、「あなた」かもしれません。
 
 
第一回 恵みの雨

  「通い慣れた道にこんな店が?」

  少し不審に思いながらも、私はドアをゆっくりと開けた。5人も入ったらいっぱいになりそうな店だが、不思議と圧迫感がない。

  「いらっしゃいませ」

  にっこり笑って迎えてくれたのは、アイロンのかかった白いシャツが似合う美しい女性。年は30代半ばくらいだろうか? 
「こちらへどうぞ」と案内する指の長さに見とれつつ、私はカウンターに座った。
彼女は「どうぞ」と言いながら、温かいおしぼりを手渡してくれた。冷たくなった手をおしぼりで包むと、涼やかなユーカリの香りがふうっと鼻に抜けた。

  「だいぶお濡れになったようですね」

  「ええ・・・・」

  タンブラーを拭きながら、私に微笑みかける彼女は、本当にきれい。「透明感がある」というのは、こういう女性を言うのだと思った。

  「雨はお好きですか?」

  「はっ?」

  突拍子もない質問に私は無遠慮なほど驚いてしまった。雨を好きな人なんて、この世の中にいるんだろうか? そんな人がいたらお目にかかりたいくらいだ。

  「キライです。洋服や靴も濡れるし、セットした髪は崩れるし。それに・・・・」


 
葉石かおり
葉石かおり
(はいし・かおり)
エッセイスト
プロフィール
  ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。利酒師、焼酎アドバイザーの顔も持つ。
  「おひとりさま」のエキスパートとして各メディアで活動中。ひとり時間を豊かにする「おひとりさまマガジン」を主宰。
  現在、東京と京都の半々暮らし。
  西陣の老舗呉服屋・宮崎織物とコラボしたメイドイン京都ブランド「和をん」では手ぬぐい、帯ほか、酒小物も販売予定。
  近著に「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」(集英社)がある。
  また京都を舞台にした携帯小説「酒亭 心酔」がブックスレジモにて近日公開。
著作
「日本全国この日本酒がウマい!」
(KKベストセラーズ)
「隠れ酒がうまい!」
(講談社)
*「女は年下男が好き」
(講談社)
「あなたが辞めるといった時、上司は止めてくれますか?〜ゆるキャリのススメ〜」
(講談社)
*「ビバ!!年下婚」
(光文社)
「30代からの結婚がハッピーになれる!」
(三笠書房)
*「かっこいい女はおひとりさま上手」
(PHP研究所)
「実践!おひとりさま道」
(ライブドアパブリッシング)
「女利酒師とソムリエールが選ぶ今宵最高の一本」
(集英社)
「大人の蕎麦屋はここにある」
(集英社)
「産まない理由」
(イースト・プレス)
*は台湾、中国、韓国にて翻訳出版
 
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